思い込みの罠

私が中高生だった遠い昔の昭和の時代、女子学生の運動着はブルマでした。女子校でしたので、別に何とも思わず、階段の多い電車通学の制服のスカートの下にも、いつもブルマ着用でした。まさに、青春時代はブルマとともに。ちなみに英語ではbloomers (pants や trousersと同様に複数形扱いです)といいます。

その後ずっと時間が経って、さいたまに越してきた後、私はしばらく雑誌タイムの講読会に参加していました。次回までに各自に割り当てられた箇所を精読してくるというやり方で、1語たりともごまかさないという読み方は、私が子育てしながら実務翻訳する際に大いに役立ってくれました。

で、ある時、皇太子妃雅子様の記事がこの勉強会で取り上げられ、いつも通り、割り当てられた箇所を訳していったのですが、その時、"She is a late bloomer" という1文が、私にはどうしたわけか、まったくわからなかったのです。bloomer ときたら、私にはブルマしか思い浮かばない。その上、雅子妃殿下は私と同い歳で、たしか女子校出身。私と同じ様にブルマ着用されていたのかなぁなどと、とんでもない方向に想像力はめぐっていき、変だなぁと思いながらも、「彼女はいつまでもブルマをはいていた」と訳したところ、一瞬の沈黙の後、爆笑の渦に巻き込まれてしまいました。

はい、bloom が「花が咲く」という動詞ですから、late bloomer は「遅咲きの人」です。いったい私は何を考えていたのでしょうか?でも、いったん思い込みの罠にはまってしまったら、こんな簡単なことさえも、まったくわからない時があるのです。

この経験から私は受験生に、「変だ、でもどうしても分からないと思ったら、いったん、その箇所から離れること。テスト中でも、そこはそのままおいておいて、他の箇所を済ませてから戻ってみると、「なーんだ」っていうこともあるから。思い込みの罠にはまらないように気を付けて!」と、常々言っています。

今もあの時の失敗を思い返すと、恥ずかしいやら、笑ってしまうやら。でも、大失敗をすると、それは何年たっても絶対に忘れないもの。間違えるのも、あながち、悪いことではないのです。